フォーカル・ジストニアの7不思議ー①フォーカル・ジストニアは心因性ではない?

①フォーカル・ジストニアは心因性ではない?
フォーカル・ジストニアは、研究すればするほど不可思議な事柄に当たります。
この記事では、「フォーカル・ジストニアの7不思議」とも呼べる事象について述べたいと思います。トップバッターは、「フォーカル・ジストニアは心因性ではない」です。
「フォーカル・ジストニアが心因性ではない」というのは、フォーカル・ジストニアを発症してしまった患者さんの間でよく聞かれる言葉です。
でも、その根拠が何なのか、あなたはご存知ですか?
実は、「フォーカル・ジストニアが心因性ではない」とされた理由は、「認知行動療法では治らなかったから、心因性ではない」という、かなり不確かなものなのです。
認知行動療法とは、さまざまな技法を通して「認知の歪み」を修正しようとするものです。
今日では、保健が適用される心理療法として、クリニックや病院などの医療機関で、医師の診断・管理の下、臨床心理士や公認心理師が認知行動療法を行うことがあります。
・・・と聞くと、認知行動療法は何か特別な治療法のように聞こえますが、言ってしまえば、認知行動療法は「思い込みを修正する」ためのものです。
認知の歪みが「単なる思い込み」であれば、認知行動療法に効果はあると思います。
しかし、認知の歪みが「ものすごく根深い原因からきている」場合は、認知行動療法はほとんど役に立たないのです。
たとえば、子どもの頃に両親から肉体的・精神的虐待を受けたことで対人恐怖症に陥ってしまった人がいるとします。
このような人に「全ての他人を恐れる必要は無い」と、認知行動療法で考え方を修正しようとしても、効果を期待できないのはお分かりになると思います。
私が初めてフォーカル・ジストニアという症状があることを知ったのは、確か日本テレビの「News Zero」というニュース番組だったと記憶しています。
そこでは、「コンサート前日に、『上手く弾けなかったら、どうしよう?』と思ってから、演奏時に右手が動かなくなった」という、あるピアニストさんの告白が映し出されていました。
私は、その番組を見ながら「『上手く弾けなかったら、どうしよう?』と思ってから、右手が動かなくなったってことはーフォーカル・ジストニアは心因性ってことじゃないの?」と、直観的に思いました。
なぜ、「心因性ではないか」と思ったかというと、その理由は、私自身も「上手く弾けなかったら、どうしよう?」と思ったことが原因であがり症を発症したからです。
私がクラシックギターを習いだしてから二年目のこと、人生で二回目の発表会に出場することになりました。曲目は、あの名曲「禁じられた遊び」。
最初の発表会の「ちょうちょ」と比較して、曲の難易度がグッと難しくなりました。そして、難易度が上がったことに連れて、私の緊張度も増しました。
舞台袖で出番を待つ間、ついうっかりと「上手く弾けなかったら、どうしよう?」と思ってしまったのです。
ステージに歩み出て、ギターを構え、弾こうとしたら、途端に指がブルブル震えだしました。自分で自分の症状に驚いて、もう一度指を弦に近づけようとすると、またもや指がブルブル震えだします。
何度やってもその繰り返しで、結局私は最後まで曲を弾くことはできなかったのです。
その後、紆余曲折を経て自力で開発した心理療法であがり症を治しました。
その治していく過程の中で、あがり症の原因はいろいろあるものの、直接的な引き金は「上手く弾けなかったら、どうしよう?」と心配したことだったというのが分かったのです。
フォーカル・ジストニアの原因ー予期不安
予期不安とは、まさに「○○だったら、どうしよう?」と、不安の先取りをしてしまうことです。
脳は、現実に起こっていることと、単なる不安の先取りとの区別がつきません。
そのため、私がついうっかりと「上手く弾けなかったら、どうしよう?」と不安に思ってしまったことで、脳は「クラシックギターを弾くことは、何か危険で、不安なことと関係しているんだな」と判断してしまったようです。
脳がそのように関連付けたことで、私がギターを弾こうとすると、ストレスホルモンが分泌されます。そして、その影響で指がブルブル震えだします。
フォーカル・ジストニアを発症してしまったピアニストさんも、おそらく私と同じことが脳の中で起きていると思います。
つまり、「上手くピアノが弾けなかったら、どうしよう?」と思ってしまったことで、「ピアノを弾くことは、何か危険で、不安なことと関係している」と脳が判断してしまったのです。
そのため、ピアノを弾こうとするとストレスホルモンが分泌され、その影響で指が曲がったり、ブルブル震えたり、動かなくなったりしてしまうのだと思います。
原因が心因性であるならば、治療法は心理療法一択だと思います。
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