フォーカルジストニアと音ゲー

フォーカル・ジストニアと音ゲー
音ゲー・・・と言われてよく分からない人でも、「太鼓の達人」とか、一世を風靡した「DDR(ダンスダンス・レヴォリューション)」と言われれば、「あぁ!」と分かる人も多いのではないでしょうか。
音楽のリズムに乗りながらステップを踏んだり、操作ボタンを叩いたり、太鼓を叩いたりと、音楽と一体になって遊べる楽しいゲームが「音ゲー」です。
そんな私は片手で数えるほどしかゲームセンターに行ったことがありません(笑)。
なので、「音ゲー」という専門用語?は最近初めて知りました。
なんと、「音ゲー」のやり過ぎが原因?でフォーカルジストニアを発症する人がいると言うのです。
たとえば、操作ボタンを押す指が曲がるそうです。
楽器演奏も音ゲーも「指を使って何かをする」ものなので、脳的には楽器演奏も音ゲーも同じくくりなのかもしれません。
フォーカル・ジストニアの原因

このブログにたどり着いた方ならご存じかも知れませんが、フォーカル・ジストニアの原因は「反復練習のし過ぎ」というトンデモ説がまかり通っています。
なぜこのようなトンデモ説が生まれたかというと、
- 最初に転換性障害の一種として「指に力が入りにくくなる」という症状が現れる。
- この段階では演奏家もフォーカル・ジストニアの初期症状ということを知らず、「練習不足か?」と思い、焦って反復練習のし過ぎをする。
- 指に力が入らない原因は心因性なので、反復練習のし過ぎをしても当然指に力が入らない。
- 焦れば焦るほどノルアドレナリンが過剰分泌され、ノルアドレナリンの作用で筋肉が硬直し、今度は指が曲がるようになる。
- この段階で焦って脳神経外科へ駆け込む。
- 音楽家の話を聞いた医師が「原因は反復練習のし過ぎに違いない!」と断定する。
以上、聞いたら思わず腰砕けになるような「トンデモ説発祥のメカニズム」でした。
この「反復練習のし過ぎ」説がフォーカル・ジストニアの原因と仮定すると、「音ゲー」のフォーカル・ジストニアもまた、「音ゲーのやり過ぎ」ということになります。
youtubeで音ゲーをプレイしている人の動画を見ると、激しいリズムの乱れうちに思わず圧倒されそうになります。
どんな世界にも「達人」「プロ級」と呼ばれる人はいるので、そういう人はたまの休みに「音ゲー」をやる人とは違って、一回の練習量も桁外れに多いことでしょう。
そういう人が「音ゲー」のやり過ぎでフォーカル・ジストニアになったと言われると、何となく納得してしまう人もいるかも知れません。
しかし、それでも「音ゲーのフォーカル・ジストニアの原因は反復練習のし過ぎではない」と言えます。
フォーカル・ジストニアの「本当の原因」

フォーカル・ジストニアの「本当の原因」は、「もし、○○だったら、どうしよう?」という「予期不安」です。
予期不安とは、まだ起こってもいないことに対して不安を先取りしてしまうことです。
音楽家でフォーカル・ジストニアに悩む人をカウンセリングすると、彼らは全員発症時にストレスやプレッシャーを抱えていたことが分かりました。
ある人は外国の音大に留学したり、ある人はコンクールの審査員を務めることになったり、ある人は大がかりなステージで演奏することになったり、ある人は音大の卒業試験を受けることになったりしていました。
これらの出来事はすべてバラバラですが、ストレスやプレッシャーがかかる状況であるということはお分かりになると思います。
しかし、これらの出来事を経験した音楽家全員がフォーカル・ジストニアを発症するか?というと、そんなことはないですよね。
音大生全員がフォーカル・ジストニアを発症した、オーケストラの楽団員全員がフォーカル・ジストニアを発症した、という仰天ニュースは未だかつて耳にしたことがないでしょう。
これと同じ理屈で、全国各地のゲーセンで音ゲーに熱中した人にフォーカル・ジストニア大量発生・・・というニュースも聞いたことがありません。
ということは、「フォーカル・ジストニアを発症する人・しない人」で何らかの違いがあるはずです。
フォーカル・ジストニアを発症した音楽家と、フォーカル・ジストニアに縁がない音楽家との違いはたった一つ・・・
「失敗したら、どうしよう?」という予期不安に襲われるか否か、なのです。
このことを言い換えると、「失敗することが自分の価値を下げると思っている」か否か、または「完璧ではない自分に価値は無いと思っている」か否か、なのです。
もし、失敗しても自分の価値は下がらない、と思っているのなら、失敗を恐れることはありません。
失敗を恐れることがなければ、予期不安に取りつかれることもありません。
したがって、フォーカル・ジストニアを治すためには、この予期不安を取り除くことしかありません。
音ゲーのフォーカル・ジストニアの治療

音ゲーのフォーカル・ジストニアを発症した人も、発症時に何らかのストレスやプレッシャーを抱えていたはずです。
そして、そのストレスやプレッシャーがフォーカル・ジストニア発症の引き金になったのだと思います。
そもそも、「○○のし過ぎ」という状態そのものが、強迫障害の一種であると言えます。
したがって、音ゲーのフォーカル・ジストニアを治療するためには、その引き金となったストレスやプレッシャーをカウンセリングと心理療法で癒すことです。
そして、「○○したら、どうしよう?」という予期不安も取り除いてもらいます。
予期不安を取り除くためには、「失敗しても、自分の価値は下がらない」「自分は、ありのままの自分で価値はある」ということをカウンセリングと心理療法で身に付けてもらいます。
「失敗した自分に価値は無い」という恐れは、子どもの頃に親からありのままの姿で愛してもらえなかった悲しみや怒りが原因です。
つまり、フォーカル・ジストニアを治すためには、子どもの頃に抱いた親への葛藤を解消してもらうことになります。
カウンセリングでこのことを音楽家の皆さんにお話しすると、ある方は深くうなずいて納得されたり、ある方は「自分は親を恨んでなんかいない!」と反発する方に二分されます。
意外に思われるかもしれませんが、後者の「自分は親を恨んでなんかいない!」と反発される人の方が心の傷が深く、したがって、治療も時間がかかる傾向があります。
自分の産みの親を怨むということは、一般的には不道徳とされています。
したがって、自分が親を恨んでいることに罪悪感を持つことになります。
また、本心では親を恨んでいるのに、それを認めることでかえって傷が深くなるような気がして認めたがらない、ということもあります。
こういう方たちには、親を恨むのは悪いことではないこと、親を恨む気持ちを認めることは治療のための大切なファーストステップであり、欠かせないことだ、ということを説明します。
すると、大抵の人は渋々ながらも説明に納得し始めます。
たとえ渋々ながらでも、説明に納得したそのときから真の意味での治療が開始します。
時間はかかっても、自分が親を恨んでいたことを認め、そんな自分を慰め、自分を許し親を許すことで心の傷は少しずつ癒されていきます。
それに呼応するかのようにフォーカル・ジストニアの症状が軽症化していきます。
すべての過去を認め、許し、自分を愛することでフォーカル・ジストニアの症状は消えていきます。
現代社会では、ストレスやプレッシャーから逃げ切ることはできません。
ストレスやプレッシャーをはねのけるためには、「強い自分」になることです。
「強い自分」になるためには、「つまらないことで自分の価値は揺らがない」という自信をつけることです。
そうすれば、ストレスやプレッシャーに一々オタオタしなくて済みます。
強い自分になったとき、音ゲーもさらに磨きがかかることでしょう。
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