声楽家Aさんのあがり症治療記録・1
声楽家のAさんを襲ったあがり症
声楽家のAさんは、音大を卒業後、とある研究会に所属し日々研鑽に励んでいました。
ところが、あるコンクールに出場したとき、自分がひどいあがり症だということが分かりました。
当然、コンクールには入賞できませんでした。
また、Aさんはその当時師事していた先生から、パワハラに近いような厳しい指導を受けていました。
音楽の先生で、熱意のあまり生徒に厳しい指導をしてしまう先生がいらっしゃいます。
*個人的感想ですが、声楽家の先生は「体育会系熱血指導型」が多いです(^^;。
Aさんはプロを目指している訳ですから、先生が厳しい指導をするのもやむを得ないことです。
しかし、その先生の指導の厳しさは度を越していました。
Aさんは、先生の暴言のひどさに悩み、その先生のもとを離れるかどうかで悩んでいました。
音大卒のAさんがあがり症を発症した原因
音大の先生と生徒なら、イヤでも我慢しなければいけません。
しかし、Aさんが指導を受けていた先生は、個人レッスンの先生です。
その先生と相性が良くないのであれば、先生を変えるのはよくあることです。
それにもかかわらず、Aさんは「やめたいけれど、やめられない」というジレンマに悩まされてしまい、ついには不眠症に陥ってしまいました。
あがり症はどんどん悪化し、今では音程さえとれなくなってしまいました。
また、Aさんには「プロの声楽家として、オペラの舞台に立ちたい」という夢がありました。
その夢を叶えるためには、本格的にプロ養成所に通わなければいけません。
しかし、こんなにあがり症がひどくては、養成所の試験に合格できるはずがありません。
コンクールはあがり症のせいで入賞できず、レッスンでは先生の暴言に悩み、養成所の試験が目前に迫る中、Aさんは困り果てて私のもとを訪れました。
Aさんからひととおりお話をうかがった私は、Aさんが先生から暴言を浴びせられ、不眠症に陥りながらも先生を変えられない理由は、Aさんとご両親との関係にあると判断しました。
私はAさんにご両親との関係をうかがいました。
すると、Aさんはお父様の厳しい教育について話してくださいました。
Aさんのお父様は、少しでもAさんのテストの成績が悪いと、「お仕置き」として体罰に近いようなことをしました。
Aさんはこのことがトラウマとなってしまいました。
あがり症を発症する人の背景
あがり症になる人は、Aさんの育った家庭のようにしつけや教育に特に厳しい家庭で育てられた傾向があります。
Aさんの潜在意識には「いつも完璧でなければいけない」「少しでもミスをすれば、お父さんから体罰を受けることになる」という恐怖が浸み込んでいました。
先生は、生徒から見れば「親」的な立場にあります。
Aさんにとって、「親」の立場である先生を変えることは、「親の期待に背く」ことと同じだったのです。
Aさんが先生のひどい暴言に悩まされながらも先生を変えることができなかったのは、「親の期待に背く」罪悪感からでした。
間違った罪悪感を修正することで訪れた変化
そこで、私は心理療法で子どもの頃のAさんのトラウマを癒しました。
また、「先生を変えることは、親の期待に背くことと同じだ」という間違った罪悪感も心理療法で癒しました。
1ヶ月後、Aさんからは「おかげさまで、不眠症が治りました!」という嬉しいご報告を頂きました。
また、Aさんは親身になって優しく指導してくださる、別の優しい先生と巡り合うことができたそうです。
そして、Aさんに暴言を吐く厳しい先生とは無事に縁を切ることができました。
Aさんは、「厳しい先生を変えることは、親の期待に背くことと同じこと」という間違った罪悪感から解放されたのです。
Aさんがお父様の厳しい教育から受けたトラウマから完全に解放されたとき、あがり症も完治していることでしょう。
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最初のカウンセリングから半年後、Aさんからさらに嬉しいご報告を頂きました。
なんと、Aさんは志望していた、プロの声楽家になるための養成所の試験に合格し、みごと入学することができたそうです。
Aさんは、日本一の素晴らしい先生に囲まれながら、充実した日々を送っているとのことでした。
あがり症の治療を開始してから1年も経っていませんが、私はAさんの着実な成長を感じ、自分のことのように嬉しく思いました(^^♪。
「先生を変えたいのに、変えられなくて眠れないほど悩んでいます・・・」
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