フォーカル・ジストニア=異常な緊張

フォーカル・ジストニアの治療
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皆さんは、「フォーカル・ジストニア」の日本語の意味をご存じでしょうか?

「フォーカル」は、「局所性」という意味なのは皆さんもご存じだと思います。

「ジストニア」は、「医学用語だろう」と、あまり気に留めていなかったかもしれません。

*私もそうでした(笑)。

しかし、今日初めて「ジストニア」の日本語の意味を知りました。

この言葉は、「ジス」と「トニア」に分かれています。

それぞれの意味が「ジス」が「異常な」、「トニア」が「緊張」という意味だそうです。

つまり、フォーカル・ジストニアの日本語の意味は「局所性の異常な緊張」と言います。

私はこの日本語の意味を知って、「フォーカル・ジストニアの真実をついているな」と、感心しました。

「異常な緊張」の正体

フォーカル・ジストニアの治療

人間の脳は、何らかの危機的な状況に遭遇すると、ストレスホルモンを分泌させて身体の筋肉を過緊張させることが知られています。

あがり症の皆さんも、本番のステージを前にして緊張のあまり身体がガチガチになりますよね。

フォーカル・ジストニアにお悩みの皆さんも、楽器演奏しようとすると指の筋肉が過緊張するあまりに、指があらぬ方向へ曲がります。

そうなる理由は、たくさんの知らない人たちを前にして歌ったり楽器の演奏をしたりすることが「危機的状況」だと皆さんの脳が捉えているからです。

あがり症の皆さんが本番を前にして身体が緊張でガチガチになるのも、フォーカル・ジストニアにお悩みの皆さんの指が曲がるのも、心理的・身体的メカニズムは同じです。

つまり、どちらも

「たくさんの知らない人たちを前にして歌や楽器演奏をする」→危機的状況

危機的状況を脳が察知してストレスホルモンを分泌させる→筋肉が過緊張する

ということです。

おそらく、フォーカル・ジストニアでお悩みの皆さんの方が、あがり症の皆さんよりストレス耐性が弱く、ストレスホルモンが分泌されやすい体質なのだろうと思います。

その結果、あらぬ方向に指が曲がるという不思議な現象が起こるのでしょう。

時々、「あがり症でもフォーカル・ジストニアでも悩んでいます」という音楽家さんがクライエントにいらっしゃるので、この仮説はあながち間違っていないと思います。

そういう私も、あがり症と発声時頸部ジストニアを併発していました。

*その頃の私は「発声時頸部ジストニア」という症名を知らず、「あがり症の症状の一種」としか考えていませんでした。

次に、あがり症やフォーカルジストニアの皆さんは、人前での歌や楽器演奏に対して何をそんなに異常に緊張するのか?という疑問が湧いてきますよね。

その理由は、「歌や楽器演奏の失敗が、愛される価値が失われる恐れに直結するから」です。

人類最大の恐怖

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人類最大の恐怖は、もちろん「死への恐怖」です。

生きている以上、死は避けられないものです。

誰しも天寿を全うしたい、と思うことでしょう。

戦争のない平和な日本に住んでいる限り、死は事故死、病死、自死、老衰による自然死に限られています。

老衰による自然死は仕方がないけれど、3つの死は怖いし、できれば避けたいですよね。

ところが、実はこれら4つの死以外に、もう一つの死の恐怖が人間の脳にインプットされているのをご存じですか?

ほとんどの人は、その「死の恐怖」が脳にインプットされていることに気が付いていません。

インプットされていることに気が付いていないのなら、恐れることもないのでは?と思うでしょう。

確かに、普段は脳にインプットされていながらも人目につかないように潜在意識に隠れているので、普段の私たちはその死の恐怖の存在に気が付きません。

しかし、何かの拍子に潜在意識から急浮上して、私たちを死の恐怖のどん底に突き落とすことがあります。

それが、「見捨てられ不安」という、人類最大の恐怖です。

見捨てられ不安

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私たちは、生まれてから随分と長い間、親に面倒をみてもらわないと生きていけません。

衣食住、教育、衛生など、全方面で親に面倒をみてもらう必要があります。

もし、親が子どもの世話を放棄してしまったら、一人で自活する術の無い子どもは飢え死んでしまいます。

第二次世界大戦の終戦直後の日本は、お腹を空かした戦争孤児がたくさんいたそうです。

現代の平和な日本では、路上でそのような悲惨な光景を目にすることはありません。

まして、音楽家の皆さんは比較的裕福な家庭の子女が多く、飢え死にや親から養育放棄されるなんてことはまずありません。

しかし、それでも現代の平和な日本の状況とは関係なく、死への恐怖は存在しています。

それが、「親から見捨てられる不安=見捨てられ不安」という恐怖なのです。

物質的には満たされていても、始終親がガミガミと子どもを叱ったり、きょうだいと比較してけなしたり、子どもに過剰な期待を抱いて子どもを息苦しくさせたりすると、子どもは「ありのままの私は親から愛される価値のない人間だ」「愛される価値のない私は親から見捨てられてしまう」と、不安な気持ちになります。

この不安な気持ちが「見捨てられ不安」になります。

たとえ衣食住や教育など、物質的な面で充分に庇護されていても、私たちはそれだけでは生きていけません。

親からしっかりと愛されている自信、「自分は愛されているんだ」という自信が必要なのです。

この自信が無いと、私たちはいつも不安定な精神状態になります。

親から愛されないことは、そのまま死への恐怖に繋がるからです。

子どもは親から愛されようと、あの手この手で生き残る知恵を絞ります。

その知恵の1つに、「いつも完璧でいれば、親は私を愛してくれるだろう」というのがあります。

「いつも完璧でいれば」と考えている人が大人になり、音楽家の道を選びます。

そして、歌や楽器演奏をしようとするとき、「もし、失敗したらどうしよう?」という恐怖に襲われることがあります。

人間のやることですから、常に100%完璧な歌や楽器演奏ができる訳ではありません。

親からしっかり愛された人は、完璧な歌や楽器演奏ができなくても、それほど恐れることはありません。

しかし、「見捨てられ不安」が頭に根付いている人は、この恐怖に耐えることができません。

そのため、「もし、失敗したら・・・」という恐怖に耐えきれず、脳がストレスホルモンを分泌させて、身体がガチガチになったり、声が上ずったり、指が曲がったりするのです。

フォーカル・ジストニアの治療

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したがって、フォーカル・ジストニアの治療は指を一音ずつ動かすことでも、視床下核と淡蒼球内節を熱凝固することでもありません。

フォーカル・ジストニアの治療は、頭にしっかり根付いた「見捨てられ不安」をカウンセリングと心理療法で癒すことです。

見捨てられ不安が癒されれば、歌や楽器演奏の失敗に対してそれほど恐れなくなります。

脳が異常な緊張(ジストニア)しなくなれば、筋肉も異常緊張(ジストニア)しなくなります。

あらゆる「とらわれ」から解放されたあなたの歌や楽器演奏は、きっとかつてないほど自由で伸びやかで、たくさんの聴衆の心をつかんで離さないことでしょう

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