左手のピアニスト
2018年1月4日、読売新聞の社会面でフォーカル・ジストニアを発症し、左手だけでピアノを演奏する女性ピアニストさんの記事が掲載されていました。
奇しくも仕事初めの日に紙面を飾ったフォーカル・ジストニアの記事に、私は運命的なものを感じました。
記事によると、そのピアニストさんは東日本大震災の直後、フォーカル・ジストニアを発症されたそうです。
2011年3月11日、東北地方を襲った東日本大震災の悲惨な状況が、今もなお目に焼き付いている人も多いと思います。
当時の私も、TVに次々と映し出される、津波で全てを失った人々の悲しみや辛さに、自分ではどうすることもできないもどかしさや痛ましさを抱えていました。
また、ひっきりなしに起きる余震に脅え、「いったい、これから日本はどうなってしまうんだろう・・・」という強いストレスを抱えていました。
もちろん、こういった「震災ストレス」を抱えていた人は、私だけではありませんでした。
私の周囲の人も、多くが不眠や食欲不振、強い不安感を訴えていました。
あの頃の日本は、全体的に悲愴な雰囲気に包まれていたと思います。
フォーカル・ジストニアを発症した左手のピアニストさんも、おそらく何らかの震災ストレスを感じていたはずです。
私がフォーカル・ジストニアに悩む数多くの演奏家、声楽家をカウンセリングした結果、彼らはフォーカル・ジストニア発症時に何らかの「強いストレス」を抱えていたことが分かりました。
ある人は大きなステージを担当することになったり、ある人はコンクールの審査員を担当することになったり、ある人は音楽家として独立することになったり、またある人はプライベートの人間関係でもめ事に巻き込まれていたりしました。
しかし、これらのストレスは、「大人ならば、誰でも起こり得る」ものです。
大物ミュージシャンなら、日本中、ときには世界中を飛び回り、大きなステージをこなしています。
彼らが大きなステージの度にフォーカル・ジストニアを発症していたら、仕事になりませんし、そんな話を聞いたこともありません。
つまり、フォーカル・ジストニアを発症する演奏家と、フォーカル・ジストニアとは1度も縁がない演奏家との間には、明確な「違い」がある、と考えるのが妥当です。
そして、私はその「違い」こそが、フォーカル・ジストニアを発症する人特有の「偏った思い込み」であるということを突き止めました。
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私が心理療法でこの「偏った思い込み」を癒した途端、指が動くようになった、という演奏家も数多くいらっしゃいます。
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もちろん、「フォーカル・ジストニアを発症させるほどの強い思い込み」を癒していく作業は、簡単なものではありません。
しかし、その作業は「ありのままの自分」に戻るために必要な作業です。
私のもとにカウンセリングに訪れる演奏家の皆さんは「なぜ、私だけがこんな目に遭わなければいけないのか」という強い不満や不安、悲しみや憤りを感じています。
そんなとき、私は彼らに「フォーカル・ジストニアが発症したことの意味は、『ありのままの自分を愛せるようになりなさい』という脳からのメッセージなんですよ」とお伝えします。
そうすると、全員目からウロコが落ちたような顔をされ、そして深く納得されます。
ときには、ご自分のこれまでの人生を振り返り、涙される方もいらっしゃいます。
フォーカル・ジストニアを発症したピアニストさんが左手だけでピアノを演奏できるようになるまで、大変な苦労や努力をされたことでしょう。
しかし、その苦労や努力を「ありのままの自分を愛せるようになる」ために向けられていたら、ピアノ演奏だけでなく人生のあらゆる場面において、はるかに素晴らしい実りが得られていたはずです。
この記事をご覧いただいているあなたも、「フォーカル・ジストニアが発症したことの意味」について、今一度深く考えて頂きたいと思います。
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