シンガーソングライター・Tさんの発声時頸部ジストニア治療記録
シンガーソングライターのTさんは、3ヶ月前から突然中低音の声が途切れたり、裏返るようになりました。
今では、力まないと声を出せなくなってしまったそうです。
シンガーソングライターとしてようやく自活できるようになったばかりのTさんは、あちこちの病院を受診したり、リハビリ療法に通ったりしました。
しかし、一向に発声が良くならず、困り果てて私のもとを訪れました。
Tさんの発声時頸部ジストニアの原因
Tさんの発声時頸部ジストニアの原因を探るために、発声時頸部ジストニアが発症した頃のTさんの音楽活動や生活、これまでの生育環境などを教えて頂きました。
Tさんは活動拠点を日本から外国に移すことになり、言葉の違いや文化の違いなどで苦労されることが多かったそうです。
さらに音楽家として自立するためのストレスやプレッシャーも加わり、そのことがTさんの発声時頸部ジストニアの原因となったように思われました。
Tさんの発声時頸部ジストニアが発症した頃のお話を一通り伺った後、私はTさんに発声時頸部ジストニアの原因を説明しました。
「たとえば、声帯ポリープや咽頭炎など、発声器官に障害がある場合を除き、発声の不調は100%心因性です。
代表的な発声障害に失声症や場面緘黙、吃音症等があります。
したがって、発声時頸部ジストニアの治療は、発声にブロックをかけている心理的ストレスが何なのかを明らかにし、心理療法で癒すことになります。
ブロックが外れれば、発声は今までのように元通りになります」
Tさんの発声時頸部ジストニアの治療
初めに、Tさんの現在の発声の不調を確認するために、Tさんに歌を歌ってもらいました。
最初の発声は、どこか「発声にブレーキがかかっている」という印象を受けました。
そこで、Tさんが発声時頸部ジストニアを発症するときに抱えていた、様々なストレスやプレッシャーを心理療法で癒しました。
その後、再びTさんに先ほどと同じ歌を歌ってもらいました。
すると、「1回目と比較して、かなり発声のブレーキが外れ、自由な発声を取り戻している」印象を受けました。
Tさんも、短時間で自分の発声が変わったことに驚きを隠せないご様子でした。
しかし、まだまだ本調子ではないご様子でしたので、さらにTさんが抱えている不安を取り除くことにしました。
Tさんは、私のもとを訪れる前、とある大きなイベントに招聘されて、ゲストシンガーとして参加しました。
ところが、発声時頸部ジストニアのせいで、そのときの歌はかなり悲惨な状況になってしまったそうです。
せっかく自分を招聘してくれた主催者に申し訳ない、という思いと共に、Tさんは「出だしの第1声がちゃんと出せるのか」という不安を抱えてしまいました。
そこで、さらにこの不安を心理療法で癒しました。
最後に、またTさんに同じ歌を歌ってもらいました。
すると、Tさんの発声はまるで「バズーカ砲のように」劇的に変化しました。
これには、Tさんも感激しました。
「すごい!」
「信じられない!」
「これです!この発声が、私が発声時頸部ジストニアを発症する前の、本来の私の発声です!」
と興奮に包まれました。
自画自賛で恐縮ですが、私自身もTさんの発声がたった2時間で劇的に変化したことに驚き、嬉しく思いました。
私はTさんに「恐怖や不安が、発声にロックをかける原因となります。これから、もしまた発声に不調を感じるようなことがあれば、恐怖や不安を癒してくださいね」とアドバイスしました。
発声時頸部ジストニアの原因となる「恐怖や不安」
発声時頸部ジストニアに限らず、フォーカル・ジストニア、また本態性ジストニアも、発症の際には「恐怖や不安」が大きく関与しています。
その「恐怖や不安」とは、「完璧に演奏できないことが自分の価値を下げる」ことに基づいています。
この「自分の価値が下げられる怖れ」は、人間のみが独自に持つものと言えるでしょう。
動物が生きていくためには水と食料、空気が必要です。
しかし、霊長類の長である私たち人間には、それらに加えて「自尊心」「自己肯定感」が必要になります。
これらの「自尊心」「自己肯定感」があって初めて、社会で堂々と「一人の人間」として生きていくことができます。
これらの「自尊心」「自己肯定感」は、子どもの頃に両親からしっかりと愛され、受け入れられたことで育ちます。
幼い子どもにとって両親とは、まさに「絶対的な存在」であり、神にも等しい存在です。
そんな両親から愛され、保護されることによって健全な「自尊心」「自己肯定感」が育ちます。
そして、成長すると「一人の人間」として社会で生きていくために欠かせない「心の拠り所」となります。
「私は両親から愛され、受け入れられてきた。私にはいつでも両親という絶対的な味方が存在する」という自信が、厳しい生存競争を勝ち残るための燃料となります。
野生動物のドキュメンタリー番組をTVで見ていると、群れのリーダーとなるオスはツノや体格の大きさでメスの獲得競争に勝ち残り、種の保存に成功するのが分かります。
このツノや体格の大きさを、人間の「自尊心」「自己肯定感」と考えることができます。
ツノが折れてしまったり、ケガで動けなくなったオスは、新しいボスによって群れから追放される運命にあります。
集団で生きていく動物にとって、群れから追い出されることはそのまま「死」に直結します。
人間も動物ですから、集団生活で生きていくための立派なツノや体格の代わりとなる「自尊心」「自己肯定感」が無いと、社会でつまはじきにされたり、出世競争で落ちこぼれになったりして、ときに生活が困窮します。
余程のことがないと、実際に生活に困窮するようなことは無いかもしれませんが、おそらくこの「恐怖や不安」は本能として人間にインプットされているのだろうと思います。
もしあなたが発声時頸部ジストニアやフォーカル・ジストニア、また本態性ジストニアにお悩みなら、あなたが抱えている「恐怖や不安」の正体を明らかにしてください。
答えが見つかったとき、Tさんのようにあなたの症状は一瞬にして消え去ることでしょう。
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