フォーカル・ジストニアのギタリスト

フォーカル・ジストニアのギタリスト

フォーカル・ジストニアのギタリスト

ガールズバンド「CYNTIA」のギタリスト、YUIさんがフォーカル・ジストニアにより、無期限活動休止となりました。

CYNTIAのサイトによると、「ピックを握ると自分の意思と相反して右腕に過剰な力が入ってしまい、力の抜き差しができなくなって手首や指が硬直してしまう状態に陥る」そうです。

この症状は、まさに私がカウンセリングしてきたギタリスト達の症状と同じです。

ということは、おそらく原因も同じだろうと思われます。

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フォーカル・ジストニアの原因

フォーカル・ジストニアに悩むたくさんの音楽家をカウンセリングしてきた結果、彼らは発症時に様々なストレスやプレッシャーに見舞われていたことが分かりました。

ある人はプロとして独立するために頑張っていたり、ある人はコンクールの審査員を務めることになったり、ある人は大きなコンサートに参加することになったりしていました。

このような場合、普段より強いストレスやプレッシャーがかかります。

ストレスやプレッシャーは、現代人にはつきものです。

しかし、フォーカル・ジストニアを発症してしまう人は、ストレスやプレッシャーに弱い傾向があります。

そのために、普通の人なら乗り越えられるはずのストレスやプレッシャーを受けると、脳が「キャパオーバー」の状態になります。

フォーカル・ジストニアの脳科学的原因

脳の中に「扁桃体」という部位があります。

扁桃体は、過去の経験と照らし合わせて、現在の状況を「危険か、そうでないか」を判断します。

そして、「危険だ」と判断したときには、「闘争か逃走」モードに入ります。

「闘争」モードに入ると自律神経のうちの交感神経が優位になります。

「逃走」モードに入ると副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。

アドレナリンが分泌されて交感神経が優位になると、体の各器官の血管が収縮し、瞳孔が拡大したり、血圧が上昇したり、心拍数が増加したりします。

また、ノルアドレナリンが過剰分泌されることで筋肉への血流が増えすぎます。

筋肉への血流が増えすぎたことで筋肉は緊張しすぎて指がこわばります。

つまり、一方ではアドレナリンが過剰分泌されたことで血管が異常に収縮し、他方ではノルアドレナリンが過剰分泌されたことで血流が増えすぎて筋肉が緊張し過ぎたことによる相乗効果がフォーカル・ジストニア発症の原因なのではないか?と思います。

YUIさんが「自分の意志と相反して、右腕に過剰な力が入る」とき、このようなアドレナリンやノルアドレナリンの過剰分泌による相乗効果が原因のように思われます。

また、ギタリストのNさんをカウンセリングしていた際、「指に力を入れようとしても、『見えない力』でグイグイと押し戻されるような感覚がする」と仰っていました。

Nさんの症状も、アドレナリンとノルアドレナリンの過剰分泌による相乗効果が原因と思われます。

鍼、カイロプラクティック、アレキサンダーテクニーク、リハビリ療法などが効果が無いのは、こうしたメカニズムを全く理解していないからです。

ストレスやプレッシャーに弱くなった原因

最近の研究によると、子どもの頃に両親から精神的・肉体的虐待を受けた子どもは、脳が変形したり収縮したりするそうです。

そして、そのような脳の変化の中に、扁桃体が少しの脅威でも過剰に反応することが分かりました。

子どもの頃に両親から十分な愛情を受けて育った人は、扁桃体が少しのストレスやプレッシャーに過剰反応することはありません。

それに対して、子どもの頃に両親から精神的・肉体的虐待を受けて育った人は、少しのストレスやプレッシャーに過剰反応してしまい、アドレナリンやノルアドレナリンが過剰分泌されてしまうのです。

私がカウンセリングした音楽家は、皆子どもの頃に両親から精神的・肉体的虐待を受けて育ちました。

クライアントの中には「私は両親から十分に愛されて育った」と反論する人もいます。

よくお話をお伺いすると、それは親の一方的な「愛情の押し売り」にしか過ぎず、窒息しそうなほどの息苦しさを覚えていたことが分かるのです。

子どもの気持ちを無視した一方的な「愛情の押し売り」は、実は子どもを自分の意のままに動かそうとする精神的虐待の一種です。

しかし、子どもとしては暴言や暴力、ネグレクトなどの明らかな虐待を受けた訳ではありませんから、「私は両親から十分に愛されて育った」と主張してしまうのです。

一方では窒息しそうなほどの息苦しさを感じていたにもかかわらず、他方では「愛されて育った」と主張することで、さらに強いストレスがかかってしまいます。

フォーカル・ジストニアの治療

フォーカル・ジストニアを治療するためには、子どもの頃に両親から精神的・肉体的虐待を受けて負ったトラウマやコンプレックスを治療する必要があります。

「扁桃体が少しのストレスやプレッシャーを受けて過剰反応する」ときの、「ストレスやプレッシャー」とは、子どもの頃に負ったトラウマやコンプレックスが原因です。

トラウマやコンプレックスを心理療法で治療することで、扁桃体にとっての脅威が消失します。

扁桃体が過剰反応することがなくなれば、アドレナリンやノルアドレナリンが過剰分泌されることも無くなります。

その結果、フォーカル・ジストニアが治ります。

トラウマやコンプレックスが扁桃体を過剰反応させる原因

フォーカル・ジストニアのおおもとの原因であるトラウマやコンプレックスを治療しない限り、せっかくストレスやプレッシャーから受けた精神的ダメージを心理療法で取り除いても、将来的にストレスやプレッシャーがかかったら、フォーカル・ジストニアが再発してしまいます。

定位脳手術でフォーカル・ジストニアが治っても、数年後には再発する人がいると聞きます。

その原因は、フォーカル・ジストニアのおおもとの原因であるトラウマやコンプレックスを治療していないからです。

「ストレスやプレッシャーに弱い気質」の原因は、「いつも完璧でなければいけない」という思い込みです。

この思い込みの原因は、「子供の頃に、親からありのままの自分を愛してもらえなかったこと」です。

子供の頃に、親からありのままの自分を愛してもらえると、「私は、ありのままの自分でいいんだ」という自信を持ちます。

このような子どもは、他人と自分を比べて一喜一憂しません。

たとえ学校の成績が悪くても、そのことで自分を必要以上に責めたり落ち込んだりしないのです。

しかし、子どもの頃にきょうだいや親せきの子ども、近所の子どもと比較してけなされたり、成績が悪いとガミガミ叱られたり、成績が良いときだけ褒められたりするとします。

このように育てられると、子どもは「いつも完璧でなければいけない」「いつも親の期待に応えないといけない」と思いこみます。

このように思いこんでしまった子供は、学校の成績が悪いと、「自分はダメな人間だ」と、クヨクヨとうつ状態になるまで落ち込みます。

これはフォーカル・ジストニアに悩む音楽家をカウンセリングした結果の一例です。

このような原因以外にも、フォーカル・ジストニアに悩む人は、何らかの理由で「親に対して、心理的な壁がある」のが特徴です。

普通は、親と子の間には「心理的な壁」はあってはならないはずですよね。

ところが、何らかの理由で親に対して「心理的な壁」が築かれてしまったということは、親を無条件に信用・信頼していないということです。

親を無条件に信用・信頼していないということは、やはり過去に「親に対する子どもの信用・信頼」を損なうに足る出来事があった、ということを意味しています。

また、親を無条件に信用・信頼していない、ということは、裏を返せば、子どもは「私は、親から無条件に愛されていない」という自信の無さを表しているのです。

そして、この自信の無さが「ストレスやプレッシャーに弱い気質」の土壌となってしまうのです。

したがって、「ストレスやプレッシャーに弱い気質」を治療するためには、「子どもの頃にありのままの自分を愛してもらえなかった寂しさや悲しみ、怒り」を心理療法で癒すことです。

そして、「親はありのままの私を愛してくれなかったけど、そんな私でも価値はある」という新しいセルフ・イメージを確立することです。

そうすれば、将来的にストレスやプレッシャーがかかっても、「たとえ失敗しても、そのことで自分の価値は揺らがない」という自信があるので、扁桃体が過剰反応することはありません。

その結果として、フォーカル・ジストニアが治るのです。

実際、ギタリストのNさんは「治療を受ける前と比較して、今は小さなことで落ち込まなくなった」「自分に自信がついた」と仰っていました。

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このような内面の変化なくして、フォーカル・ジストニアの完治はあり得ないのです。

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