フォーカル・ジストニアの隠された原因–期待に応えられない恐怖

フォーカル・ジストニアの原因
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フォーカル・ジストニアに悩む音楽家をカウンセリングしていると、ある特徴に気が付きます。

それは、強迫観念にとりつかれていることです。

人によって強迫観念は違いますが、代表的なものに

いつも完璧な演奏をしなければいけない

というのがあります。

その他にも、

「〇〇さんの期待に応えなければいけない」

というのもあります。

「〇〇さん」には、奥さんや夫、会社の上司、師事している先生などが入ります。

いくら完璧な歌や楽器演奏を目指しても、人間ですからその日の体調などで思うような演奏ができない日もあります。

「いつも完璧でいなくては」という強迫観念にとりつかれていない人は、「まぁ、そんな日もあるさ」で済ませます。

しかし、強迫観念にとりつかれている人は、致命的なダメージを受けます。

その結果、フォーカル・ジストニアという症状になって現れます。

また、「〇〇さんの期待に応えなければならない」というのは、大抵の場合その人の勝手な思い込みです。

別に○○さんが「私の期待に応えなければダメよ!」と迫った訳ではありません。

たとえ○○さんがそう言ったとしても、「私があなたの期待に応える義務はない」と、突っぱねればいいだけのことです。

それなのに、なぜ「○○さんの期待に応えなければ・・・」と思ってしまったのでしょうか?

その理由は、「〇〇さん」というのは、実はその人のお母さん/お父さんだからです。

心理学的に、男性からみた妻はその人の母親であり、女性からみた夫はその人の父親にあたります。

また、師事している先生が男性ならその人のお父さん、女性の先生なら母親にあたります。

つまり、「妻/夫/先生の期待に応えなければ・・・」と思っているとき、深層心理では「お母さん/お父さんの期待に応えなければ・・・」と思っている訳です。

期待に応えられないことが意味するもの

フォーカル・ジストニアの原因

自信がない母親/父親が、子どもに罪悪感を持たせることがあります。

罪悪感を持たせることで子供をコントロールしようとするのです。

よくあるのが、「お母さん/お父さんは○○した方がいいと思うんだけど。でも、あなたがしたくないのならいいのよ」というものです。

本心では子どもに○○させようと思っているのに、自分が悪者になりたくないので、「どっちでもいいんだけど」と、子どもに選択権を与えて自分に逃げ道を作ります。

子どもがそれを真に受けて、「じゃ、○○しない」と言おうものなら、途端に母親/父親が不機嫌になります。

こういうことを繰り返すうちに、子どもは子どもなりに「お母さん/お父さんの言うことを鵜吞みにしちゃいけないんだな」「お母さん/お父さんを喜ばすためには、自分の気持ちを押し殺さなきゃいけないんだな」と学習します。

幼い子どもにとって、母親/父親から愛されないことは、そのまま死への不安へと繋がります。

生き残るためには、自分の気持ちを曲げてまでお母さん/お父さんの期待に応えなければならないのです。

こうして、その人の頭の中に「お母さん/お父さんの期待に応えなければいけない」という強迫観念がこびりつくことになります。

こういう人が大人になり、音楽家の道を歩むことになります。

そしてあるとき、自分の演奏に自信を持てなくなる時が来ます。

人間ですから、いくら努力しても思ったような結果が出せないときもあるし、演奏をミスすることもあります。

フォーカル・ジストニアを発症しない人は、そういうことを一々気に病んだりしません。

ところが、フォーカル・ジストニアを発症してしまう人は、こうしたことから深刻な精神的ダメージを受けてしまいます。

「あんなに頑張ったのに」「自分には才能がないんだ」「いくら努力しても自分はダメ人間だ」

と、自分で自分をドンドン追い込んでしまいます。

そうして精神的疲労が溜まりに溜まった結果が、フォーカル・ジストニアなのです。

フォーカル・ジストニアの治療

フォーカル・ジストニアの原因
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したがって、フォーカル・ジストニアの治療はこの凝り固まった強迫観念をカウンセリングと心理療法で取り除いてあげることです。

一つずつ、凝り固まった思い込みをカウンセリングと心理療法で取り除いていくうちに、「なんで、自分は○○さんの期待に応えなければいけないと思い込んでいたんだろう?」と、それまでの自分に疑問を持つようになります。

やがて、「〇〇さんの期待に応えなければいけないなんてことはないんだ。たとえ演奏が上手くいかなくても、それでも自分には価値があるんだ」と、「ダメな自分でも価値はある」という自信が湧いてきます。

そして、歌や楽器演奏を失敗するようなことがあっても、「そういう時もあるさ」でやり過ごすことができるようになります。

誰かの期待に応えるための努力は辛いものです。

でも、自分で自分を喜ばせるための努力なら苦になりません。

思うような結果が出せないことがあっても、

すべての経験は、自分の成功のこやしになる。自分の未来は、きっと輝かしいものになるだろう

と、自分と自分の人生に楽観的になり、希望を持てるようになります。

やがて、すべての望みが現実化することを目の当たりにすることでしょう。

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