ドラマーHさんのフォーカル・ジストニア治療記録
ドラマーHさんのフォーカル・ジストニア治療記録
ドラマーのHさんは、プロの演奏家として独立を目指して頑張っていました。
ところが、練習に励むうち、左手が思うように動かなくなってしまいました。
今では、スティックを持った手が固まってしまうというフォーカル・ジストニアの症状に悩まされるようになりました。
Hさんは頭鍼の治療を受けていましたが、効果は感じられませんでした。
そんなとき、私のサイトの記事を読み、思い当たるところがあって私のもとを訪れました。
Hさんによると、Hさんのお母様は大変気難しいところがあって、ちょっとしたことでHさんに辛くあたったそうです。
Hさんのお母様のように子どもに対して情緒不安定なところがある母親のもとで育つと、子どもはいつも親の顔色をうかがうようになります。
そのために、「どうやったら親が喜んでくれるだろうか」「親をガッカリさせてはいけない」ということを気にしがちになります。
フォーカル・ジストニアのクライアントの特徴の1つに、「プロの演奏家を目指して、独立のために練習を頑張っていたときに、フォーカル・ジストニアを発症した」というのがあります。
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気楽な勤め人生活と別れを告げ、独立してプロの音楽家として生活していこうとするとき、何でも自分の思い通りにできるという楽しみや喜びがあります。
しかし、その楽しみと引き換えに、「上手くいかなかったら、どうしよう?」というプレッシャーもついて回ります。
まして、Hさんには養うべき家族がいるので、そのプレッシャーもひとしおです。
こういうとき、自分を肯定している人は「まぁ、なんとかなるだろう」と、ものごとを楽観的にとらえます。
ところが、Hさんのように自分を肯定できていない人は、そのプレッシャーがモロにかかってしまいます。
Hさんは、長年勤務していた会社の社長のことで悩み事がありました。
社長の会社経営が上手くいかず、会社は倒産の危機を迎えていました。
しかも、その社長が社員とのコミュニケーションが下手で、会社経営上で大事なことを社員に黙ってしまう傾向があったそうです。
私はそのお話をお伺いしたとき、「当然、Hさんは社長に対して不信感や不満や怒りを抱いているだろうな」と推察しました。
ところが、Hさんの口から出た言葉は意外なものでした。
なんと、社長が社員に対して大事なことを話さなかったとき「悲しみを覚えた」そうなのです。
意外な言葉を耳にしたとき、私は「Hさんが悲しみを覚えたのは、社長に対して直接的に抱いたのではなく、過去の「ある事件」を想起した上でのことだろう」とひらめきました。
そこで、さらにHさんにお母様との過去の思い出を振り返ってもらいました。
すると、Hさんは過去の「ある出来事」について話してくださいました。
あるとき、Hさんのお母様は親戚との関係でもめて、Hさんの前で泣いてしまったそうです。
心配したHさんがお母様になぜ泣いているのかを尋ねたとき、お母様は何も答えてくれなかったそうです。
お母様からしたら、大人同士のもめごとに子どもをまきこみたくない、と考えたのでしょう。
でも、幼いHさんからしたら、「お母さんの役に立ちたい、と思ったのに。お母さんは僕を信用してくれないんだ」という悲しみを抱くことになってしまいました。
Hさんは普段から「親の役に立たなければ」「親をガッカリさせてはいけない」と考える傾向がありました。
その結果、「泣いているお母さんの役に立てない自分はダメな人間だ」という間違った思い込みを抱くことになってしまいました。
Hさんが子供のときに抱いた悲しみは潜在意識に抑圧されました。
そして、成長したHさんが「大事なことを社員に言わない」社長さんと接したとき、過去の悲しみが甦り、フォーカル・ジストニアを発症させたのです。
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そこで、私はHさんが過去のお母様との間で抱いた様々な葛藤や悲しみを心理療法で癒しました。
また、Hさんには自分のドラマーとしての才能に自信がなかったので、心理療法で才能に対する自信をつけてもらいました。
Hさんは私の説明に深く納得されたご様子でした。
Hさんが「親の期待に完璧に応えられない自分はダメだ」というプレッシャーから解放されたとき、フォーカル・ジストニアは自然と治っていることでしょう。
「スティックを持とうとすると、手が固まってしまいます・・・」
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