あがり症の人が発表会で絶対にやってはいけないこと
あがり症の人が発表会で絶対にやってはいけないこと
あがり症の人が発表会で絶対にやってはいけないこと、それは・・・
ズバリ!「また、あがったらどうしよう?」と、恐怖に怯えることです。
あがり症のスイッチは、脳が「恐怖」を感じることで入ります。
脳の中の「扁桃体」という部位が、過去の経験と照らし合わせて人間にとって「危険か、そうでないか」を判断する、と言われています。
そして、「危険だ」と判断したとき、全身に向かって「逃げろ!」という指令を下します。
扁桃体からの「逃げろ!」という指令を身体が受け取ると、副腎髄質からアドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。
あがり症の主な症状である
- 大量の発汗
- 激しい動悸
- ど忘れ
- 手足の震え
- 声が上ずり、ひっくり返る
等は、アドレナリンの作用によって自律神経のうちの交感神経が活発になったせいである、とされています。
あがり症の原因
あがり症の原因は、主に小さい頃の経験にあります。
たとえば、子どもの教育に異常に厳しい両親のもとで育てられると、子どもは失敗を必要以上に恐れるようになります。
子どもが何か失敗をすると、いつまでもネチネチガミガミと叱りつけてくるので、子どもは「失敗することは、いけないことだ」と思うようになります。
このように「失敗することは、いけないことだ」と思いこむことも、あがり症の原因になります。
この他にも、あがり症の原因として、子供時代のこんな経験が考えられます。
たとえば、
- 音楽の授業で皆の前でリコーダーを吹くことになり、緊張して失敗し、それをクラスの皆から笑われたこと。
- 運動会のリレー競技でバトンを受けそこなって転んでしまい、それをクラスの皆から笑われたり、なじられたりしたこと。
- 国語の授業で朗読を指名され、緊張してつっかえてしまい、それをクラスの皆から笑われたこと。
- 学芸会の演劇でセリフを忘れてしまい、それを観客から笑われたこと。
など、「たくさんの人から見られる場で何かを失敗し、それをクラスの皆から笑われたこと」が原因です。
このとき、自分の失敗をクラスの皆から笑われたことで、「失敗することは恥ずかしいことだ」「失敗することは、クラスの皆から怒られることだ」「失敗した自分は、ダメな人間だ」という思いが記憶されます。
大人になり、小さい頃の「皆が見ている前で失敗し、それをクラスの皆から笑われたり、なじられたりした恥ずかしい経験」はすっかり忘れてしまいます。
実際には脳の中から消えた訳ではなく、ただ思い出さないように脳の中で抑圧されているだけのことです。
しかし、「スピーチ」「プレゼン」「発表会」など、「たくさんの人から見られる場で、何かをする」状況に立たされると、途端に脳の中に抑圧していた記憶が甦ります。
すると、扁桃体が小さい頃のみじめで恥ずかしい思いをした経験と照らし合わせます。
扁桃体は「たくさんの人が見ている前で失敗すること」=「みじめで、恥ずかしくて情けない思いをすること」と判断します。
そこで、「そこから逃げろ!」という指令を全身に下します。
そして、副腎髄質からアドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンの作用によって交感神経が活発になり、あがり症の不快な諸症状が現れます。
したがって、あがり症を治すためには、過去の「みじめで、恥ずかしい思い」を、脳の中から心理療法で消去しなければいけません。
「失敗することは恥ずかしいことだ」「失敗することは、クラスの皆から怒られることだ」「失敗した自分は、ダメな人間だ」という思いが脳から消えれば、扁桃体も「たくさんの人が見ている場で失敗することは、恥ずかしいことではないんだな」「だったら、スピーチやプレゼン、発表会から逃げ出さなくても大丈夫なんだな」と判断します。
扁桃体が「そこから逃げろ!」という指令を下さなくなれば、あがり症の諸症状も現れなくなります。
したがって、「また、あがったらどうしよう?」「また、頭が真っ白になったらどうしよう?」とステージ上で恐怖に怯えることは、実は脳に向かって「あがれ!」「頭が真っ白になって、ど忘れしろ!」と指令を出しているのと同じことなのです。
「なんて、恐ろしい・・・」と思うでしょう?
私もそうだったので、あがり症の人が発表会でこう考えてしまうのは理解できますし、仕方の無いことです。
それでは、発表会であがらないようにするためには、どうしたらいいでしょうか?
もちろん、1番は小さい頃の経験で受けた心の傷を心理療法で癒すことです。
そして、「失敗することは恥ずかしいことだ」「失敗することは、クラスの皆から怒られることだ」「失敗した自分は、ダメな人間だ」という思いを「失敗することは、恥ずかしいことではない」「失敗することは、誰にでもあることだ」「失敗したって、自分の価値が下がる訳ではない」という正しい考えに修正することです。
と、こうやって書くといかにも簡単な作業に聞こえますね(^^;。
しかし、実際は治療を開始してから完治まで2年ほどかかる、根気のいる作業となります。
したがって、これからご紹介する方法はあくまで「一時しのぎ」にしか過ぎません。
しかし、「一時しのぎ」であっても、私には効果があったのでご紹介します。
発表会であがらないようにするためのテクニック
それは、当たり前のことかもしれませんが、歌なら歌、楽器の演奏なら楽器の演奏と、対象そのものに意識を集中させることです。
「ここの歌詞は音程がこうだから、こう歌わないと」「この小節のこの部分は先生に注意されたとおりに演奏しないと」・・・と、頭の中を音楽のことでいっぱいにすることです。
すると、意識が「音楽」「演奏」「楽譜」「音程」「リズム」のことに集中します。
人間は、1度に2つのことを考えることはできません。
意識が音楽に集中することで、扁桃体が「たくさんの人が見ている前で失敗し、それを皆から笑われたり、なじられたりして、恥ずかしくてみじめな思い」という恐怖を発表会と結び付け無くなります。
すると、扁桃体が「そこから逃げろ!」という指令を出さなくなります。
指令が出なければ、あがり症の不快な諸症状も出なくなります。
実際、私も難しい曲を歌う時は必死になって「ここは、レッスンで先生に何度も注意されたから、気をつけて歌わなきゃ・・・」と考えているときは、あがり症の不快な諸症状は全く現れません。
ところが、油断して「また、あがったらどうしよう?」と不安に襲われると、その瞬間からあがり症の不快な諸症状に襲われます(泣)。
そして、アワアワしているうちにステージ上で大爆死します。
あがり症でお困りのあなたも、本番ではこのことに注意してください。
「また、あがったらどうしよう?」・・・そう考えると、確実にあがるので、素早く意識を音楽にスイッチしてください。
ステージに進む前から、「気を付けて演奏しなければいけない小節」に、オニのように厳しい先生の顔を思い浮かべながら(汗)、楽譜や演奏技術に意識を集中することです。
そうすれば、あがらなくなります。
「頭では分かってはいるけど、つい心配し過ぎてあがります・・・」