舞台恐怖症とアレキサンダー・テクニーク

舞台恐怖症とアレキサンダーテクニーク

私の考えでは、アレキサンダー・テクニークの創始者のアレキサンダーさんの「舞台上で突然声がでなくなる」という症状は、舞台恐怖症による「発声時頸部ジストニア」だと考えて間違いない、と思います。

Nさんの発声時頸部ジストニア治療記録・1

そもそも、呼吸器や脳に障害がある等の病気以外で声が出なくなるという症状は、100%心因性です(失声症、吃音症、場面緘黙等)。

舞台恐怖症は、失敗恐怖症の一つです。

失敗恐怖症の人は「自分には才能なんて、無いのではないか?」という恐れを抱えています。

その恐怖が極限に達すると、身体の一部が動かなくなります。

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恐怖を感じると起こる身体的変化

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人間の脳が何らかの脅威を感じ取ると、扁桃体という、脳の中にあるアーモンド状の神経集合体が「過去のデータと照らし合わせて」現状を分析します。

異変を察知した扁桃体は「すぐに闘え!」「すぐに逃げろ!」という、「闘争か逃走」モードに入ります。

すると、扁桃体は体を非常事態に作り替えるために、副腎髄質や副腎皮質に指令を出します。

指令を受け取った身体は、アドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾールなどを分泌させます。

これらのストレスホルモンの影響で、身体は様々な変化をします。

私たちが緊張すると胸がドキドキしたり、手のひらに汗をかいたり、身体がガチガチになったりするのは、すべてストレスホルモンの影響によって交感神経が優位になったことで起こります。

人類最大の恐怖

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人間の脳は「自分には愛される価値なんて、無いのではないか?」ということを1番恐れています。

愛される価値が無いと、助け合って生きていく共同社会では「死」を意味していたからです。

また、親から長期間にわたって面倒をみてもらわなければ生きていけない子どもにとって、親から愛されないこともそのまま「死」を意味しています。

このように、人類は「愛される価値」が自分にあると信じられることが、生きていく上で水や空気や食料と同じくらい重要なものになります。

ところが、子どもの頃に親との関係が悪く、「ありのままの私で愛される価値はあるんだ」と信じることができない人たちがいます。

このような人たちは、自分自身の「愛される価値」を自分以外のものに求めます。

例えば、

「いつも完璧にしていれば愛されるだろう」

「いつも周囲に気を配っていれば愛されるだろう」

「いつも自己犠牲して周囲に尽くせば愛されるだろう」

「いつもニコニコして愛想を振りまけば愛されるだろう」

といった考えです。

このような人が大人になり、「愛される価値=才能」と考えるようになったとします。

こういう人にとっては、「役者の才能がない」=「生きる価値が無い」ということになります。

このような人が「自分には、才能が無い」という事実に直面することは「死刑宣告」に等しいのです。

つまり、アレキサンダーさんは「自分には役者の才能なんて、無いのではないか?」という恐れに直面したことで、ストレスホルモンの影響によって声が出なくなった―「発声時頸部ジストニア」という症状が発生したのだと思います。

なぜそう思ったかと言うと、アレキサンダーさんは、声が出るようになった後、その経験を生かしてアレキサンダー・テクニークの普及に努めたからです。

あなたなら、「無事に手が動くようになった」→「本業のピアニストに復帰しよう!」と思うでしょう?

私も、「無事に声が出るようになった」→「声楽のコンクールに出まくるぞ!」と思います。

ところが、アレキサンダーさんはそうしなかった―なぜなら、「自分には、役者の才能なんて、無いのではないか?」という恐れを現実化したからです。

アレキサンダー・テクニークの普及に努めていれば、本業の役者から逃げる言い訳になります。

「才能が無いことへの恐れ」から逃げるための口実として、アレキサンダー・テクニークの普及に死に物狂いで没頭したことでしょう。

役者の仕事から逃げれば逃げるほど、気分は安定し、声も出るようになったはずです。

彼の声が出るようになったのは「日常の習慣的な動作による頭や首の緊張云々」ではなく、役者の仕事から離れたことで、舞台恐怖症からも同時に逃げられたからだと思います。

*そもそも、「日常の習慣的な動作による頭や首の緊張云々」なら、

「整体かカイロプラクティックを受けるか、マッサージでもしてもらえば?」

と思います。

アレキサンダー・テクニークとは、アレキサンダーさんの失敗恐怖症を緩和する、「精神安定剤」のような役割を果たしていたのだろうと思います。

「自分には、才能なんて、無いのではないか?」という恐れは、100%ただの思い込みです。

思い込みは心理療法で癒して、超一流の演奏家、役者、アーティストとして活躍されればよいのです。

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