フォーカル・ジストニアとグリーフ・ケア

グリーフ・ケアとは?

フォーカル・ジストニアの原因

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自力で開発した心理療法であがり症/発声時頸部ジストニアを完治した心理カウンセラーの川畑律子です。

フォーカル・ジストニアを治すためには、グリーフ・ケア(喪失の悲嘆へのケア)を行う必要に迫られることがあります。

グリーフ・ケアとは、近しい人を亡くした後に、残された人たちが抱く悲しみや苦しみ、後悔の念などをケアすることです。

大切な家族や友人を亡くしたとき、私たちはさまざまな感情に襲われます。

「あのとき、ああすればよかった」「生きている内に、もっと優しくするべきだった」「なんで、あのときあんなにひどいことを言っちゃったんだろう?」「あの人の命を助けるために、もっと私にできることがなかったのかしら?」

などと、さまざまな感情が湧きあがり、その人を捉えて放しません。

こうした悲しみや苦しみも、6ヵ月ほど経てば自然回復される、と一般的に言われています。

しかし、中には6ヵ月以上経過しても、さまざまな感情に襲われることで食事が取れなくなって痩せたり、眠れなくなったりする人たちがいます。

悲しみや苦しみが慢性化し、一日中悲しんだり苦しんだりしないと罪悪感にさえ襲われるようになったら、その人はグリーフ・ケアを受ける必要があると思います。

フォーカル・ジストニアが発症した原因

フォーカル・ジストニアの原因
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フォーカル・ジストニアが発症した直接的な原因は、人によって様々です。

たとえば、

ある人はギター演奏のフォームを変えた時から、

ある人は海外留学してから、

ある人は大掛かりなコンサートに出場することになってから、

ある人は音大の卒業試験に臨むことになってから、

ある人はコンクールの審査員を任されることになってから、

など、まさに千差万別といったところです。

しかし、その背後に隠された真実の原因は、たった一つです。

それは、

「親の期待に応えられない私に、愛される価値はないのではないか?」

という恐怖や不安です。

関連記事:フォーカル・ジストニアの隠された原因ー親の期待に応えられない恐怖

クライエントたちは、さまざまな事情により、親に対して葛藤を抱いている場合があります。

たとえば、親が他のきょうだいと差別したり、子どもに暴言を吐いたり、暴力を振るったり、ろくに面倒をみなかったり、その反対に過剰な期待をかけ過ぎたりすると、子どもは「私は愛されている」という実感を持つことができなくなります。

この実感を子どもが持つことができなくなると、不安や恐怖を打ち消すために一生懸命「いい子」でいようとします。

「いい子」でいれば、親は私を愛してくれるはずだ。だから、有名な音楽家になって活躍すれば、親は私を愛してくれるはずだ・・・

そんな思い込みを抱えた彼らが「音楽家としての転機」を迎えると、乗り越える自信の無さに再び不安や恐怖が甦ります。

「この転機を乗り越えることができなければ、私はお母さん/お父さんから愛されなくなるのでは?」という恐怖や不安が頭をもたげてくると、脳からストレスホルモンが分泌されます。

そして、そのストレスホルモンのせいで筋肉が過緊張し、演奏時に指が曲がるのだろうと思います。

グリーフ・ケアで葛藤を乗り越える

フォーカル・ジストニアの原因

実際、フォーカル・ジストニアに悩む演奏家たちをカウンセリングしていると、発症する数年前に親を亡くし、心の整理ができていないケースが多かったのです。

表面的には演奏家として大成しているように見える彼らであっても、こころは「傷ついた子ども」のままのこともあります。

「お母さん/お父さんの期待に応えられないまま、永遠の別れを迎えてしまった・・・」

そんな後悔の念が彼らを襲い、音楽家としての人生の転機を迎えたときに、溜め込んだストレスが限界を超えてフォーカル・ジストニアを発症してしまうのだろうと思います。

実際のカウンセリングでは、親に対して抱いていた未消化の思いを解消してもらいます。

そして、「自分は愛されていない」と思い込んでいたけれど、親の愛情表現が下手だったり、親自身もそのまた親から愛されていなかったりしていただけで、本当は愛されていたんだ、ということを理解してもらいます。

親はもう亡くなってしまったけれど、親はいつでも天国からあなたを見守っている、魂はいつでもあなたのそばにいる、あなたは親にとってかけがえのない、愛されるべき存在である、ということも理解してもらいます。

このとき、クライエントは100%泣いてしまいます。

しかし、十分に泣いて、辛かった気持ちを自分で受け止め、「自分は愛されるべき存在なんだ」ということを認識できるようになると、彼らはとても穏やかで晴れやかな表情を浮かべます。

セルフイメージが変わったことで、彼らは演奏に対して不安や恐怖を抱かなくなります。

そして、ゆっくりと症状が改善していきます。

まとめ

フォーカル・ジストニアに悩む演奏家たちになぜグリーフ・ケアが必要なのか、お分かり頂けましたでしょうか。

いつかは必ずやってくる親との別れですが、できれば亡くなる前に葛藤を解消しておきたいものですよね。

でも、場合によっては、亡くなった後でないと葛藤を解消できない、という方もいるかも知れません。

いずれにしても、「親に対するわだかまりを解消したい!」と思ったその時が、カウンセリングを受ける機会だと思います。

「いいかげん、この心のモヤモヤを解消したい!」と思ったら、ご連絡くださいね。