フォーカル・ジストニアの原因
フォーカル・ジストニアの原因ー反復練習のし過ぎ

ひどいあがり症・発声時頸部ジストニアを自力で開発した心理療法で克服した心理カウンセラーの川畑律子です。
*「note」で「フォーカル・ジストニアの治し方」を販売しています。
フォーカル・ジストニアとは、日常生活では普通に指が動くのに、演奏時のみ指がおかしな方向に曲がって演奏ができなくなる症状のことです。
声楽家や演奏家に多いとされる「フォーカル・ジストニア」ですが、その原因は一体何なのでしょう?
私は、フォーカル・ジストニアの原因は「演奏恐怖症」だと思います。
フォーカル・ジストニアの原因は、一般的に「反復練習のし過ぎ」という説が唱えられています。
「反復練習のし過ぎ」説は、「反復練習をし過ぎている内に脳のシステムエラーが起きてしまい、日常生活では指が普通に動くのに、楽器演奏の時だけ指が曲がる」というものです。
なぜ、このような説が生まれたのかを考えると、以下のようなことが考えられます。
- 練習をしているとき、指が上手く動かなくなることに気が付く。
- 「練習不足か?」と思い、焦って反復練習をし過ぎる。
- 指が益々動かなくなったり、おかしな方向に捻じれたりるようになる。
- 焦って脳神経外科へ駆け込む。
- 診察した医師が「原因は、反復練習のし過ぎに違いない!」と診断する。
つまり、「反復練習のし過ぎ」説は、脳神経科学的に正しく解明された訳ではなく、「反復練習をしているうちに、指が曲がるようになった」という訴えから推測されたものだろうと考えられます。
そのように考えると、「反復練習のし過ぎ」説は、大分信頼性が薄いものに感じられませんか?
フォーカル・ジストニアの原因ー演奏恐怖症

世の中には、高所恐怖症、閉所恐怖症、広場恐怖症などたくさんの恐怖症が存在しています。
高い所へ行くと恐怖で足がすくんだり、狭い場所に閉じ込められるとパニックに陥ったりします。
このように、「○○恐怖症」は、普通は「対象そのもの」を恐怖することです。
そんなことを言ったら、
「私は、ピアノ/ギターの演奏が大好きだから、『演奏恐怖症』なんて当てはまらないわ」
という不満を持つ人もいることでしょう。
確かに、反復練習をし過ぎるほど楽器演奏が好きな人たちがフォーカル・ジストニアを発症するのですから、「演奏恐怖症」と言われてもピンと来ない方も多いと思います。
フォーカル・ジストニアの正体である「演奏恐怖症」は、「演奏そのもの」を恐怖しているのではありません。
演奏恐怖症は、「下手な演奏・演奏の失敗をすることで、自分の価値が低下すること」を恐れているのです。
演奏恐怖症の正体

私は、ひどいあがり症に10年近く苦しんできました。
しかし、あるとき「何とかして、自力であがり症を治そう!」と決意して、あがり症の研究をスタートしました。
その結果、「完璧に歌わなければならない」という強いプレッシャーを自分に課していたことが原因だと分かりました。
私は子ども時代にいじめられていたこともあって、自己評価がとても低いところがありました。
もし、自己評価が高い人だったら、人から注目されることが嬉しくて仕方ないことでしょう。
ところが、私にとっては「たくさんの知らない人から注目される発表会」が、まるで「公開処刑」の場に等しかったのです。
もし、たくさんの知らない人たちの前で失敗して上手く歌えなかったら、音程を外したら、リズムを外したら・・・という恐怖が頭の中をとめどなく駆け巡ります。
その恐怖が、「そうなったら、観客は私をバカにするに違いない!」というクライマックスに達するとあがり症を発症します。
自己評価が高い人なら、たとえ失敗してそれを笑われたとしても、自己評価が傷つくことはありません。
しかし、私にとっては生死を賭けた「公開処刑」の場に等しいのですから、異常な緊張やプレッシャーに見舞われたこともご理解できるでしょう。
つまり、私は「歌うこと」そのものを恐れていたのではなく、「元々低い自己評価が、歌の失敗でさらに低くなること」を恐れていたのです。
フォーカル・ジストニアを発症する演奏家が恐れているもの

これまで、フォーカル・ジストニアに悩むたくさんの演奏家をカウンセリングしてきました。
彼らは、フォーカル・ジストニアを発症する前、様々なストレスやプレッシャーに見舞われていました。
ある人はコンクールの審査員を務めることになったり、ある人は大規模なコンサートに出演することになったり、ある人はプロとして独立するために奮闘していました。
これらの「普段よりも強いストレスやプレッシャー」がかかることで、脳が「上手く演奏できなかったら、どうしよう?」と恐怖を感じます。
ストレスやプレッシャーにさらされることは、現代人にとっては珍しいものではありません。
しかし、自己評価が低い人はストレス耐性も弱い傾向にあります。
もし、「どんな困難も、上手く対処することができる」という自信があったら、そんなに強いストレスやプレッシャーを感じることはありません。
しかし、自分に自信がないと、「もし、○○だったら、どうしよう?」という恐怖で頭がいっぱいになってしまいます。
そのため、「上手く演奏できなかったら、どうしよう?」という恐怖がピークに達すると、脳が耐え切れず、フォーカル・ジストニアを発症してしまうのです。
したがって、フォーカル・ジストニアの治療は、「なぜ、自己評価が低くなったのか?」をカウンセリングで解明することから始めます。
そして、フォーカル・ジストニアを発症した原因であるストレスやプレッシャーを心理療法で癒し、ストレス耐性を強くさせます。
それを繰り返す内に、自己評価がどんどん高まり、自分を客観的に見ることができるようになります。
演奏の失敗を必要以上に恐怖しなくなり、演奏家としての自分の未来にも明るい展望が開けるようになった時、フォーカル・ジストニアは治ります。
その頃には、演奏スタイルも自信に満ちたものになるはずです。
そして、そういった心の余裕があふれた演奏に、さらに多くのファンが惹きつけられることでしょう。
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