フォーカル・ジストニアとパニック障害

2020年5月22日

フォーカル・ジストニアとパニック障害

フォーカル・ジストニアとパニック障害

フォーカル・ジストニアに悩むクライアントをカウンセリングしているうち、同時にパニック障害にも悩む方が何人かいることに気が付きました。

彼らは、「フォーカル・ジストニアを発症したショックで、パニック障害も併発してしまいました」と、訴えてきたのです。

パニック障害とは、突然の激しい動悸どうき、胸苦しさ、息苦しさ、めまいなどを伴う強い不安と、死ぬかと思うほどの恐怖を繰り返す症状を特徴とする病気です。

以前、パニック障害に悩むクライアント(フォーカル・ジストニアは発症していない)をカウンセリングしたことがありました。

その方は、子どもの頃に、酔って暴れる父親を見て育ちました。

その時のことがトラウマとなり、非常に不安定な精神状態のまま成長しました。

そして、何かのきっかけで子どもの頃を思い出し、パニック障害になってしまうということでした。

私は、そのクライアントが子どもの頃に受けた心の傷を心理療法で癒しました。

すると、安心感を得られるようになり、パニック障害の発作の頻度も減ったというご報告を頂きました。

フォーカル・ジストニアとパニック障害の原因

フォーカル・ジストニアもパニック障害も、原因は「非常に不安定なセルフ・イメージ」です。

自我が安定している人は、ちょっとやそっとのことで動揺したり、不安になったりしません。

ところが、非常に不安定なセルフ・イメージを持つ人は、ちょっとしたことですぐに不安になり、動揺します。

ストレスがかかると、脳全体に突起を伸ばしている神経からノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出されます。

これらの濃度が前頭前野で高まると、神経細胞間の活動が弱まり、やがて止まってしまいます。ネットワークの活動が弱まると、行動を調節する能力も低下します。

視床下部から下垂体に指令が届き、副腎がストレスホルモンであるコルチゾールを血液中に放出して、これが脳に届くと事態はさらに悪化します。

こうして、自制心はバランスを崩していくのです。

出典:「ストレスと脳」東邦大学神経科学研究室 増尾好則教授

パニック障害の原因は、「ノルアドレナリンの過剰分泌」とする説があります。

先ほどの「子ども時代に、酔って暴れる父親を見ながら成長した」クライアントの脳は、おそらくちょっとしたことでストレス反応を起こし、ノルアドレナリンが過剰分泌され、それが原因でパニック障害を発症していたことが考えられます。

フォーカル・ジストニアやパニック障害を発症するクライアントの特徴

私がフォーカル・ジストニアに悩む音楽家をカウンセリングするとき、必ず質問させて頂くことがあります。

それは、「あなたが子どもの頃、ご両親との関係はどんなものでしたか?」という質問です。

私がこの質問をすると、クライアントの表情はサッと曇り、言葉は淀みがちになります。

そして、両親が子ども時代の自分にいかに辛くあたっていたかを、切々と語り始めるのです。

彼らの口から語られる、彼らが育った家庭環境というものは、とても「愛情深い、思いやりに満ちた家庭」とは言い難いものでした。

彼らが育った家庭に溢れるものは、「愛情や思いやり」ではなく、「罵倒、罵声、暴力、無視」といった、心が芯まで冷え込むようなものばかりでした。

このような家庭に育った子供が、どうして、「自我が安定した、健全なセルフ・イメージ」を持つことができるでしょうか?

彼らが代わりに得ることができるものは、「非常に不安定な自我と、不健全なセルフ・イメージ」だけです。

言い換えれば、フォーカル・ジストニアやパニック障害を発症するクライアントは、共通して「非常に不安定な自我と、不健全なセルフ・イメージ」を持っていたのです。

フォーカル・ジストニアやパニック障害を発症するとき

「非常に不安定な自我と、不健全なセルフ・イメージ」を持った彼らが成長し、音楽家としての職業を選択します。

公務員や会社員といった、ある程度身分が保証されている職業と違い、音楽家は身分が保証されていません。

自分の演奏技術や才能、人気だけが頼りな職業ですから、一生涯安定した収入が約束されていることもありません。

そんな彼らが、ある日「人生の転機」と呼べる機会に遭遇します。

例えば、音大の卒業試験、コンクール、オーディション、コンペティション、大掛かりなコンサート、コンクールの審査員、外国の音大への留学、音楽家として独立すること等です。

このような機会が、人にストレスやプレッシャーを与えることは、想像がつくと思います。

しかし、このような機会を与えられた音楽家全員がフォーカル・ジストニアを発症するか?というと、そんなことはありません。

音楽家として生きていく以上、このような機会から逃げ続けることはできません。

ほとんどの音楽家は、このような機会を乗り越え、あるいは挫折し、それでも前を向いて自己研鑽に励みながら、音楽家として成長していきます。

しかし、フォーカル・ジストニアやパニック障害を発症する音楽家は、このような機会を乗り越えることができません。

結果を見るより前に、ストレスやプレッシャーに負けてしまうのです。

ストレスやプレッシャーに蝕まれた彼らの脳が、ある日限界値を超えるときがきます。

フォーカル・ジストニアやパニック障害を発症する音楽家は、ある日「指に力が入りにくい」という異変に気が付きます。

そして、思うように動かない自分の指に焦りや不安を感じることで、彼らはいわゆる「反復練習のし過ぎ」を行います。

*現在、脳神経外科医の間で「フォーカル・ジストニアの原因は『反復練習のし過ぎ』」説がまかり通っているのは、こうした誤解に基づくものです。

しかし、いくら「反復練習のし過ぎ」をしても、フォーカル・ジストニアの原因は脳内神経伝達物質のバランスが崩れたことにありますから、指が元通りになることはありません。

そして、不安が不安を呼ぶ悪循環で、最終的にはフォーカル・ジストニアやパニック障害を引き起こしてしまうのです。

フォーカル・ジストニアやパニック障害の治療

フォーカル・ジストニアやパニック障害の治療には、自分が育った家庭で負った心の傷に原因があるということを、クライアントが理解することが重要です。

ほとんどのクライアントは納得頂けるのですが、中にはどうしても「自分が育った家庭に問題があった」ことを認めようとしない方がいます。

これは、「自分が育った家庭には問題があった」ことを認めると、ただでさえ低いセルフ・イメージが、さらに低くなってしまうような怖れを抱くからです。

そのため、中には「自分が育った家庭は何も問題が無い。それどころか良好な親子関係だった」ということを執拗に強調される方がいます。

ところが、よくよくお話を突っ込んで伺うと、問題が無いどころか、問題だらけの家庭だった・・・ということがよくあります。

こういう場合には、丁寧に説明することで「心の思いこみのカラクリ」を理解してもらいます。

最初は私の説明に同意できなかったクライアントも、渋々ながら自分が育った家庭に問題があったことを認めることができるようになります。

やがて、「フォーカル・ジストニアやパニック障害の原因は、自分が育った家庭で負った心の傷にあった」ことを認め、治療に前向きに取り組めるようになります。

心の傷の治療を続けることで、不安定だった彼らのセルフ・イメージが、やがて落ち着きを取り戻していきます。

自我が安定し、ありのままの自分を愛せるようになっていくことで、ちょっとしたことで不安になったり動揺したりすることなく、平静を保てるようになります。

そのとき、フォーカル・ジストニアもパニック障害も完治しているはずです。

「フォーカル・ジストニアと同時にパニック障害も発症してしまいました・・・」

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